
任意後見人制度への取り組みについて
特定非営利法人和道では ”思いやりねっと事業” を通じて、みなさんが生活上の不安を感じたときのサポートに取り組んでまいりました。 2019年度は、思いやりねっと事業に加えて、さらに幅広いケアを、みなさんへご提供するため “任意後見人制度” について、研究・検討していきたいと考えています。
■任意後見制度とは..
“任意後見制度” とは、自分の判断能力がしっかりしているうちに色々なことを決め、それに基づいて後見人(サポーター)を設定する制度です。 認知症等を発症し、判断能力が低下してから、国が後見人を決める “法定後見制度” とは違います。 任意後見制度では、まず “任意後見契約”という契約を本人と後見人候補(自分が信頼できる人又は法人)の間で結びます。 この契約に基づいて、後見人が必要となったときに開始されます。 ですから、国が全部決める法定後見とは違い、”だれに後見人になってもらうのか? 又、どんな事柄を支援してもらうのか? など、自由にデザインすること” ができます。
■具体的な手順は..
まず、みなさんと後見人との間で、前述の “任意後見契約” を結びます。 その契約書は公証人役場で “公正証書” という文書にします。 これにより、契約書が公的に証明されたものとして、効力を発揮できるようになります。
契約後、委任者の判断能力が低下してきた時、後見人や親族等が家庭裁判所に “任意後見監督人(後見人の仕事をチェックする役職)” を選任してほしい旨を申し立てます。裁判所が “後見監督人を選任したときから、後見が始まり、本人がお亡くなりになられるまで”後見業務は行われます。
■任意後見契約のデメリット(できないこと)
任意後見制度は、自分の思いや意思を形にすることができる制度ですが、できないこともいくつかあります。 例えば、”自分が亡くなった後の財産や身辺の整理” ができません。 任意後見契約は “生きている人間同士の契約” により成り立ちます。 本人が亡くなった時点で契約が終了してしまうため、その後の埋葬や住居の片付け、財産の管理と整理などはできません。
また、取消権がないため、法定後見人と違い、任意後見人には “契約行為を取り消す権限” がありません。ですから、本人が悪徳商法等に引っ掛かり、高額で不当な契約を交わしたとしても、任意後見人は取り消すことができません。
■思いやりねっと事業との違いは..
思いやりねっと事業との違いは、図のとおりです。
大きな違いは、任意後見制度は、認知症等にならないとはじめられないし、身元保証や死後の整理ができないという点です。その一方、任意後見は法律上の定めがしっかりしているシステムですので、思いやりねっと事業と組み合わせることで、万全の体制ができると考えられます。
行政書士 佐野透